世界最悪レベルの原発事故なのに…その責任は一切問わず 東京電力の旧経営陣、無罪確定へ 最高裁が上告棄却
強制起訴された東京電力旧経営陣を無罪とした最高裁決定は、「巨大津波は予見できなかった」のひと言で、世界最悪レベルの事故を起こした旧経営陣に対して、誰も刑事責任は負わせないとの結論を出した。
被告は原子力部門のトップだった武黒一郎元副社長(78)と、事故対策の実質的な責任者だった武藤栄元副社長(74)。2人とともに強制起訴され、昨年10月に84歳で死去した勝俣恒久元会長は公訴棄却となり、裁判が打ち切られた。
13ページの決定文は大半が一、二審判決の要約と補足意見で、第2小法廷としての決定理由は約1ページ分だけ。事故回避には原発の運転を止めるしかなかったとの各判決を踏襲し、旧経営陣がほかに取るべき対策はなかったのかは検討せず、事故に向き合うことを放棄した。
指定弁護士は、同じ第2小法廷の2022年6月の判決が15.7mの津波試算について「安全性に十分配慮して余裕を持たせ、当時考えられる最悪の事態に対応したものとして、合理性を有する試算だった」と評価したくだりを読み上げ、今回の決定「巨大津波は予見できなかった」を「矛盾している。最高裁の見解が支離滅裂になっているのでは、と率直な感想を持つ」と語った。また「国の機関である地震本部の見解を軽視し、現在の原子力行政におもねった不当な判断として、厳しく批判されなければならない」と力を込め、「検察審査会の議決や民意を生かせなかったことは、指定弁護士として残念でならない」と総括した。