国と東電を断罪、賠償認める福島地裁判決

 「生業(なりわい)を返せ! 地域を返せ!」 3800人の原告団の請求を認めた福島原発訴訟の判決が、2017年10月10日、福島地裁(金澤秀樹裁判長)でありました。

 金澤裁判長は、国と東電が津波を予知し、事故を防止することは可能だったとして、国と東電の法的責任を断罪し、総額約5億円の損害賠償の支払いを命じました。

 弁護団の声明は、こちらを参照して下さい。

 福島地裁判決の要旨は、次の通りです。

(1)津波は予見可能だった

   2002年に文科省地震調査研究推進本部地震調査委員会が作成した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」は、客観的かつ合理的根拠を有する知見、専門的研究者の間で正当な見解と認められ、信頼性を疑うべき根拠はない。

(2)津波対策を講じていれば、事故は防げた

   福島原発1号機から4号機の非常用電源設備の高さは、津波に対する安全性を欠いており、政府の技術基準に適合しない状態だった。経産省が、2002年末までに規制権限を行使し、津波対策を命じていれば、事故は回避可能だった。

(3)国と東電には、法的責任がある

   国が規制権限を行使しなかったことは、著しく合理性を欠き、国は賠償責任を負う。原子炉施設の安全性確保の責任は、第一次的に原子力事業者にあり、国の賠償責任の範囲は東電の二分の一とする。

(4)原状回復請求は棄却する

   空間放射線量を事故前の0.04μシーベルト以下にせよとの原告の請求は、国と東電に求める作為の内容が特定されていないので却下する。

(5)国と東電は、損害賠償を支払え

   原告が生まれ育ち、生業を営み、家族、生活環境、地域コミュニティとの関わりの中で人格を形成し、幸福を追求していくという平穏生活権を人は有する。

   放射性物質による汚染が、権利の侵害となるかどうかは、侵害の程度やその後の経過、被害防止措置などを総合考慮する。帰還困難区域の旧居住者が受けた損害は、「中間指針等による賠償額」を20万円超えると認められる。居住制限区域、避難指示解除準備区域、特定避難勧奨地点、緊急時避難準備区域は、中間指針等による賠償額を超える損害は認められない。一時避難区域は中間指針等による賠償額を超える損害は3万円を認める。子供や妊婦には8万円を追加する。

   自主的避難等対象区域では、被爆や今後の事故に対する不安から、避難もやむを得ない選択の一つだった。中間指針等による賠償額を超える損害は16万円、福島県南地域では10万円、賠償対象地域外の茨城県水戸市、日立市、東海村でh1万円を認める。

   ふるさと喪失の損害については、帰還困難区域で、中間指針等による賠償額の1000万円を超える責任は認められない。