福島原発事故避難者東京訴訟 故郷に生きる権利認めながら、損害賠償は十分の一

 2018年2月7日、福島県南相馬市小高区の元住民ら321人が、福島第一原発事故に伴い長期にわたる避難を強いられたとして「ふるさと喪失慰謝料」など総額110億円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は請求の一部を認め、東京電力に対して総額約11億円の損害賠償の支払を命じた。この判決は、原告らが長期にわたって帰還禁止を余儀なくされたことは「憲法22条で保障された居住、移転の自由に対する明白かつ直接の侵害である。」と断罪し、放射能汚染で生活基盤そのものが破壊されたことについても「基盤そのものの大幅な変容という事態にさらされ、過去に類を見ない規模の甚大な被害が生じた。」と認めた。そのうえで、「「包括生活基盤に関する利益は、人間の人格に係わるものであるから、憲法13条に根拠を有する人格的利益と解される。」指摘した。

 しかしながら、今回の判決は住民が求めたふるさと喪失慰謝料と避難生活の慰謝料を、包括生活基盤に関する利益の侵害にまとめて、賠償額を請求の十分の一に削減したのは納得できない問題である。